東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)303号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び同二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
原告は、審決が本件審判請求について被告が請求の利益を有していたと判断したのは違法である、と主張する。
よつて検討するに、被告は、被告出願商標を第一類を指定商品として(指定商品をその後、「ルーデサツク、子宮サツク、子宮ベツサリー、避妊用具」と補正)商標登録出願(昭和五三年商標登録願第六九五〇七号)をしたが、本件商標と連合する登録第六七八八六三号商標を引用した拒絶査定がなされたため、これに対する不服の審判請求に及んだ、そして被告出願商標の指定商品を前記のとおり補正したところ、あらためて本件商標を引用した拒絶理由通知を受け、現に審判継続中である(この事実は、原告において明らかに争わないところである。)。右事実関係によれば、本件審判請求の結果いかんは、被告の前記出願商標についての審判請求に法的影響を及ぼし得る関係にあるものというべきであるから、右被告出願商標についての審判事件の帰趨いかんにかかわらず、被告は、本件商標の不使用を理由にその登録取消を求める法律上の利益を有するものといわなければならない。
<1> 原告は、「本件商標と被告出願商標とは、非類似であるから被告出願商標の設定登録に当たつて、本件商標は何ら障害とはならない」と主張するが、前記判示したとおり、被告出願商標は本件商標を引用した拒絶理由通知を受けているものであり、本件商標が登録されていることにより、被告出願商標を設定登録することができないおそれがある以上、本件商標の存在は被告出願商標にとつて具体的な障害となつているものといわざるを得ず、被告の本件審判請求の利益は肯認すべきである。
<2> また、原告は、「被告は、本件商標と被告出願商標とが類似していることを自ら認めているものであり、被告出願商標について拒絶理由の解消を得ることができないことが明らかである以上、拒絶理由の解消を得る目的でなされる登録取消審判請求は何の目的もないものとなるから、被告に本件審判請求の利益はない」と主張するが、被告は、被告出願商標について本件商標を引用した拒絶理由通知を受け、両者は類似していると認識しているからこそ、不使用になつている本件商標の登録を取り消すことによつて拒絶理由の解消を得んものとしているのであつて、本件商標と被告出願商標とが類似していることを被告が自認していることをもつて、被告に審判請求の利益のないことの特別の事情ありとする原告の右主張は理由がない。
なお、原告は、審決が、原告の右<2>の主張について何らの判断も示さなかつたことは、結論に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したものである、と主張するが、原告の右<2>の主張は、結局、本件審判請求の利益の有無に関する主張に尽きるもので、審決は前記「審決の理由の要点」記載のとおり、本件商標の登録が取消されることについて、被告が法律上の利害関係を有することを具体的に明示して判断しているのであるから、審決に判断の遺脱はない。
以上のとおりであるから、「本件商標の指定商品中「ルーデサツク、子宮サツク、子宮ベツサリー、避妊用具」についてはその登録は、取り消す。」とした審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。
三 よつて、審決の違法を理由としてその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。